観測史上最速の梅雨明けからの猛暑突入…。


ぎらつく太陽、ピーカン日本晴れの空の下、
東北道から磐越道へ。


もくもくと湧く夏の雲に磐梯山がよく映える。


向かったのは伝統的工芸品 会津本郷焼の産地。

戦国時代から続く小さな産地だが、
陶器と磁器の窯元両方が共存し、それぞれの作風を
追及して腕を競い合っているユニークな陶磁の里だ。


組合の運営する陶磁器会館には、
かつて作られた生活雑器や、個性的なマンガで
昔ながらの陶磁器の作り方を解説してあり、とても見出がある。



「おあいなはんしょ」
と、会津言葉の暖簾がかかる宗像窯におじゃまする。


1958年(昭和33年)のブリュッセル万博で
グランプリの表彰を受けた「にしん鉢」を製造する、
1718年(享保4年)創業の老舗窯元だ。


「にしん鉢」とは、
会津の郷土料理「にしんの山椒漬け」を仕込む道具。

近代になるまで、
山に囲まれた盆地の会津では鮮魚が手に入りづらく、
乾燥身欠きにしんを山椒と酢、醤油で漬け込む
「にしんの山椒漬け」が貴重なたんぱく源として食べられており、
その専用の道具として作られたのがこのにしん鉢。


今でも多くの家庭に置かれているそうだ。
分厚い粘土板を組み合わせて作られる重厚な鉢は、
まさに暮らしの道具の面持ち。

第8代のご当主 利浩さんは、
上品で穏やかな語り口の中にも伝統ある窯元を受け継ぐ
芯の強さを感じる方。


たっぷりと鉄釉をかけた陶器の碗、皿、湯呑、酒器は、
宇宙のような奥深さで、手に取る者を魅了する。


特にこの利鉢(としばち)は、8代目渾身の代表作。


シンプルで無駄のないたたずまいは
まさに「用の美」を感じさせる逸品。

ほかにも繊細な禾目(のぎめ)が美しい
天目釉をかけたぐい呑みや、宝石を思わせる白緑釉の器など、
陶器の良さを存分に堪能した。




器を見れば腹が減る。
会津若松の中心街 七日町の渋川問屋で会津料理のランチ。


問屋という名前から察せられるように、
明治・大正時代に大いに栄えた昔の商社を料亭・旅館に改装している建物で、
随所に往年の豪勢な賑わいが感じられる。


会津御膳を堪能。
これが噂の「にしんの山椒漬け」。


会津名物「こづゆ」もお腹にやさしい味わい。


塗りものはもちろん本場会津塗。



腹ごしらえして向かうは、
当店おなじみ会津塗の気鋭 冨樫孝男さんの工房「一富」。


強烈な漆の香りが漂っているが、
職人さんたちはすでに慣れっこで「そんなに匂いますかね?」と…(^^;;

漆は空気中の湿気を吸収して固まる性質を持ち、一般的にこのことを「漆が乾く」という。

湿度が高い春~夏は漆器生産のピークとなり、
この日もお弟子さんも総動員で作業の真っ最中!


いずれの工程も、繊細で丁寧な仕事ぶりで嬉しくなる。


職人さんの真剣なものづくりを邪魔しちゃいけないと
早々に退散し、続いて木地づくりから漆塗りまでを
一貫して手掛けるユニークな工房へうかがう。


こちらには、
むせ返るようなフレッシュな木の香りが立ち込める。


椀や皿などろくろ挽きの丸物木地を得意とするこの工房は「木工所」を看板とする。


仕上げを待つ木地と昔ながらのろくろ機械が並び、
木工の現場感ハンパない。


産地の職人が直接消費者(お客さん)と対面して
販売するのは長くタブーとされていたが、
こちらの工房のご当主はその先駆者である。


客に求められるのは何かを直接感じ、
自分のモノづくりに生かし、さらにその先を求める姿勢に、
あらためて襟を正す。



夕食前にもう1か所、会津塗職人を訪ねる。

冨樫さんの兄弟子にあたるその職人さんを、
冨樫さんは最大限の敬意をこめて「変態」と呼ぶ…。

ドキドキしながら訪ねた工房は、
おしゃれなカフェのような設え。


実直で穏やかな語り口の職人さんだが、
塗りはもちろんのこと、器への追及心がハンパない。


聞けば、
器を口につけて流れてくる汁の流量までを計算して
器づくりをするという…。


緻密という言葉はこの職人さんのためにある。
たしかに変態である。。。


今日の泊りは会津の郊外、名湯 東山温泉へ。


野趣あふれるせせらぎには蛍が飛び、
静かな温泉街は懐かしい昭和のたたずまい。


近くの旅館では、
なんと囲碁の本因坊戦の対局真っ最中。
(井山裕太七冠が見事防衛!)


地元の居酒屋へ。


やはり会津に来たら馬刺しは食べとかないと。


お酒も飲んどかないと。


〆はソースカツ丼食べとかないと。
(これでもハーフサイズ!?)


心もお腹も満たされて、あとは寝るのみ。