木曽路に入る。


しゃぶしゃぶではない。
長野県の中部、木曽川沿いに山間を縫って走る、旧中山道の呼称である。

木曽は、古くから木材の産地。
ヒノキ、カツラ、トチなどの良質な木材から、家具や木工品を生産している。
中でも「木曽漆器」は400年以上の歴史を持つ伝統的工芸品であり、今も暮らしの中に根付いている。

最初の目的地は「木曽くらしの工芸館」。


木曽らしく、総木づくりのシンプルだが美しい建物。


内部は2階までの吹き抜けで天井が高く開放的な空間に、
木曽漆器をはじめとする木工品の数々や特産品が並び、得も言われぬ木と漆の香りが満ちている。


お箸にスプーン、お椀にお弁当箱、木桶といった食器や日常雑貨から、
座卓や椅子、テーブルまで、木製品・漆器製品がずらりと並ぶ様は壮観。


価格も、求めやすいものから高級品までとバラエティーに富み、
木曽漆器の奥行きの深さを感じさせる。

隣には「さるなししょっぷ」。


サルナシとは、地元名産のマタタビ科の植物。
実はそのまま食べたり、ジャムにしたりとさまざま。
野菜に木の実と、所せましと地元の特産品が売られている。

腹ごしらえは、信州名物の手打ちそば。


地粉を使ったそばののど越しが心地いい。


こちらは「すんき」の浅漬け。
天然のすっぱさに目が覚める。


木曽漆器の一大産地、平沢地区。


国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された
昔ながらの屋並が連なる通りは、漆器店が軒を並べる。
圧巻の密集度…。

通りを抜けて訪れたのは、昭和20年創業の「丸嘉小坂漆器店」。


木曽漆器の伝統技術を活かし、
ガラスを生地に何色もの漆を塗り仕上げる硝子漆のブランド
「百色(ひゃくしき)」を作る気鋭の漆器店である。


一本一本、手作業で線を描く。
脇を絞め、手首を固定し、均一に、何本も何本も何本も。


そうして生み出される色鮮やかな器は、
従来の漆のイメージを覆し、華やかで艶やかな万華鏡のようなテーブルウェアになる。


美しく、誠実で、ドキドキする「百色」の器。


当店からお届けできるのが今から楽しみで仕方がない。


宿泊は、
日本三奇橋のひとつ「木曽の桟(かけはし)」の脇に立つ、桟温泉へ。


今ではかつての石垣を残すのみとなった橋跡を望む鄙びた温泉宿。


ぬるめの温泉にじんわり浸かり、
いつの間にか夢心地。。。。