焼きあがらないと、
絵付けの色がわからない焼き物がある。

五彩(赤・黄・緑・紫・紺青)と呼ばれる伝統の色合いを表す絵具は、
絵付け段階ではまったくその色をしていない。


にもかかわらず、
職人は大胆に絵具を操り、繊細な描写まで見事に描き切る。

その焼き物こそ、
日本が誇る磁器の逸品、九谷焼である。

忠之助商店スタッフの今回の旅は、
その九谷焼と越前漆器、そして越前和紙を探訪することとなった。


その九谷焼をガラスなど異種素材と接合し、
新たな価値を持つ器へと昇華させる現場を拝見することができた。


ひとつひとつ手描きされた色鮮やかな九谷焼の土台に、
上質なガラスの器を独自の技術で接合。

長年の粘り強い研究開発のたまもの。

今まで見たことがない「和」の新たな価値創造に息をのむ。


この模様は「花詰(はなつめ)」。

この繊細さでありながらもすべて手描き。
ひとつとして同じものはない。

さらにこの模様、実は大正時代に考案されたものという。

伝統とモダンという言葉の重みをあらためてかみしめる思い。
若手から人間国宝まで、
職人はこの同じキャンバスに技量と想像力の限りを尽くして挑む。


同じ素地だけにごまかしはきかない。
まさに贅沢な競演…。

さながら、
シャトー・ムートンのエチケットが毎年、
歴代の名画家によって描かれるのにも似ている。

この異種接合の技術は磁器とガラスだけでなく、
漆器、金属などにも応用され、これまた素晴らしい製品になり、
国内のみならず海外からも注目を集めているという。

続いて訪れたのは、130年以上の歴史を持つ窯元。


伝統と新たな気鋭の感覚を
絶妙なバランスで表現するこちらの製品の数々。

分厚い基礎力に裏打ちされた実力を感じつつも実に親しみやすく、
毎日の生活を彩ってくれる日々の器である。


こちらの「一閑人」、好きだなぁ。