二日酔いで目覚めたどんよりとした朝。
宴会の楽しさが翌朝にこたえるお年頃、熱いシャワーで眠気を覚ましていざ出発。
路面電車が通る道は走り慣れない東京人、ドキドキしながらハンドルを握る。


鹿児島に来たら芋焼酎の蔵はぜったいに見てかなきゃいかんよ~、と、昨晩ありがたいアドバイスというか指令(笑)を受け、急きょやって来たのは明治2年創業、かの西郷隆盛も好んだと伝わる、石造りの立派な蔵元。


珍しい木製の蒸留器、首まで土に埋まった熟成甕などを拝見。
これらはすべて現役で使われている。



黒ずんだ石積みの壁は蔵に棲みついている酵母菌。これらが働き、酒を醸し、ここでしか作れない味わいになる。


酒好きにはこたえられない夢の空間で、ついつい酒造り談議に花が咲き、おみやげまでいただいてご満悦。
仕事前に腹ごしらえと、地元の方お勧めのラーメン店へ。


透き通ってあっさり優しい味わいのスープにストレート麺、バラチャーシューが合うったらもう…。
うまいうまいと一気食い。



霧島市に入る。


住宅街のど真ん中に突如として出現する工房。猫が迎えてくれる。



薩摩切子の第一人者、弟子丸 努氏が代表を務める、「美の匠 ガラス工房 弟子丸」だ。


薩摩切子は、江戸末期の19世紀末に当時の薩摩藩主 島津斉彬公が主導する西洋近代化事業のひとつとして生まれ発展したが、斉彬公の没後に縮小し、以後100年以上も途絶えてしまう。
1985年に薩摩切子の復元・復興の運動が始まり、今では鹿児島を代表する工芸品の一つになっている。
弟子丸氏は85年の当初から薩摩切子の復元に携わり、今でも第一線で作品を生み出し続けている。


薩摩切子の特徴は「ぼかし」。
厚みのある色ガラスのカット技法により色に濃淡が生まれ、グラデーションのような色のぼかしになっていく。
対する江戸切子は厚みが薄い色ガラスを使うためぼかしはできないが、シャープで華やかなカットが特徴になる。


2色の色ガラスを被せたグラスは幻想的な色合いが特徴的。
いつまで眺めていても飽きさせない。



漆黒の切子。
職人が切子を施すとき、円盤カッターにガラスを押し付けながらカットしていくが、黒いガラスは透けないためカット状態を目で見て削ることができない。製作の難易度がグッと上がる逸品だ。



グラスの製作工程。
すべて職人の手仕事で仕上げられる薩摩切子のグラスはずしりと重く、宝石のように輝く。


この工房では、割れや欠けなどによりグラスにできなかったガラス廃材を再利用して、アクセサリーやゴルフマーカーをはじめとした小物を製作している。


大切なガラスを無駄にせず、少しでも世に出るモノに仕上げる優しい気持ちが作品ににじみ出る。
この工房は技巧だけではない。

しかし鹿児島は酒も肉も魚も本当に美味い!


今晩も懲りずに酌み交わしながら夜更けまで、めくるめく鹿児島Night。。。