冷たい雨がそぼ降る羽田を発ち、降り立った秋田空港はおだやかな晴天が広がり、なまはげさんに出迎えられる。
白樺 青空 南風
雪どけ せせらぎ 丸木橋 「北国の春」の旅が始まる。
早速、矢留彫金工房さんにうかがう。
秋田市の伝統工芸品「秋田銀線細工」は、純銀の細線を何本も撚り合わせ、編み上げて精密な形を作っていく。
最も細い銀線は直径0.3mm! 撚りも加工もすべて手作業で行う、驚異的に精緻で微細で美しい工芸品。
職人数は秋田県全体でも10名いるかどうか。職人の高齢化も進み、存亡の危機にある中で3名の女性職人が集まって矢留彫金工房が発足した。
これまで大ぶりで高価な作品が多かった秋田銀線細工だが、この工房では技法を生かしつつ手に取りやすいアクセサリー類を中心に展開し、良さを感じてもらえればと発信を続けている。
この銀線を木の板に挟んで撚っていきます、と実演してくれるのは職人最年少の高橋さん。
いとも簡単にやって見せてくれる。
当店スタッフも体験させていただく。あたりまえだが簡単ではない。
微細な渦巻き(平戸といいます)も手品のようにできてくる。
リングの研磨。繊細な力の込め方が伝わる。
職人の作業台。すべての工程をここで行う機能的な空間には静謐な迫力がある。
当店は同工房の秋田県外初の取扱店。
真摯で誠実なものづくりの現場に触れ、出会ってすぐに決断したのは正解だったとあらためて実感した。
ランチは名物 稲庭うどんに舌鼓。
独特のつるつる食感はやみつきになる美味しさ。
千秋公園の桜は終盤の見ごろ。
しだれ桜の淡いピンクが青空によく映える。
秋田市から東に向かい、角館に入る。
風情ある武家屋敷通りは花見の見物客でなかなかの賑わい。笑顔でそぞろ歩いている。
桧木内川沿いの桜並木も圧巻。
武家屋敷を模した形状ながら丸柱と赤レンガ造りという和洋折衷の面白い建築は「角館樺細工伝承館」。
こちらも枝垂桜が美しく、大勢の観光客で賑わっている。
通りには秋田名物「ババヘラアイス」のスタンドも。
伝統工芸品 樺細工(かばざいく)の老舗へ。
明治9年創業の建物は趣がハンパない。
樺細工は山桜の樹皮から作られる、唯一無二の工芸品である。
最も有名なのは「茶筒」。あーこれねと、見覚えのある方も多いだろう。
天然の山桜の樹皮をそのまま活かしているので、形は同じでも実は二つとして同じものはない。
樺の語源は諸説あるが、万葉集に山桜を指して「かには」と書かれ、それが「かば」に転じたのだろうということ。
初夏に山に分け入って山桜の木を探し、樹皮を採る。
今では採れる範囲は限られ、木も少なく、天然の樹皮は大変な貴重品。1cmたりとも無駄にしないよう心掛け、丁寧に作品に仕上げている。
加工の最初は樹皮を削るところから。
昔から伝わる道具でやらせてみていただく。当然のようにうまくできない…が、この樹皮も貴重品。もれなく製品に使うのだそう。
茶筒、蓋物、盆といった伝統の品に加えて、「たたみもの」と呼ばれる、樹皮を何枚も重ねる技法で作られる素敵なアクセサリーも並ぶ。
何十枚と重ねた樹皮がこちら。
大変な貴重品。
昔懐かし3色団子をごちそうに。誰もが笑顔になるお味。
夕暮れを過ぎ、秋田おでんの名店へ。
まずは一杯と出されたお出汁が美味すぎる…。
名物おでん、じゅんさい、比内地鶏に、忘れちゃいけないいぶりがっこと続く秋田グルメに、日本酒が進むったらもう…。
〆は焼きおにぎりに、稲庭うどん入りの吸い物で満腹満足大満足。
あとは温泉入って寝るだけ。
幸せなり。