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松山到着は夜も暮れた頃。
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車を駆って、
愛媛県の真ん中に位置する「内子町」へ。
今回も町並み保存地区内にある古民家の宿、
「御宿 月乃家」にお世話になる。
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わずか3部屋の小さな宿だが、
囲炉裏があり、心づくしの食事がうれしい手作りの宿だ。
五十崎社中 齋藤社長夫妻が駆けつけてくれ、
賑やかに食卓を囲む。
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お供は銘酒 千代の亀酒造謹製の月乃家限定大吟醸。
これはうまい…。
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おいしい食事、とびきりの酒、すてきな仲間。
幸せな時間は過ぎるのが早い...。
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朝の引き締まった空気が心地よい。
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石畳の町並みを少々見物。
瓦、軒の精巧に作られた飾り、趣ある格子窓、しっくいの白壁、
町並みのひっそりとした佇まいに往時の盛況を思う。
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和紙作りの朝は早い。
楮などの和紙原料を大窯で炊き、
手漉き用の繊維にする作業は明け方4時ごろからはじまる。
訪れた9時頃は、
和紙作り時間的にはすでにお昼の時間に近い感覚。
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ここは平安時代から続く伊予の和紙、大洲和紙(おおずわし)の産地である。
特に書道用半紙が名高く、丈夫でなめらかな和紙だ。
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明け方から仕込んだ和紙原料を、
女性職人が昔から変わらない手漉きで一枚一枚丁寧に漉く。
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山に囲まれたこの地の冬の冷え込みは厳しく、水も手を切るほど。
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大胆に、繊細に、
何度も何度も繰り返し、紙を漉く。
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漉いた紙を乾かすのも手作業。
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しわを付けないよう、
一枚ずつドラムに張り付け刷毛を使う姿は、慈しむかのよう。
ベテランに交じって若手女性職人も懸命に作業に挑む。
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黙々と淡々と粛々と、
和紙が出来上がっていく様にしばし見とれる。
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この手漉き大洲和紙を使い、
金属の箔を施し(ギルディング)オリジナルの和紙製品を作る、
新進気鋭の工房が「五十崎社中(いかざきしゃちゅう)」。
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当店スタッフとは旧知の間柄の齋藤宏之氏が代表を務める。
五十崎とはこの地区の名前だ。
大判のギルディング和紙の製作風景を見せていただく。
和紙を広げると突如職人の顔になり、
気迫みなぎる齋藤氏。
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のりを乗せ、金銀銅の箔を蒔き、伝統の模様を描く。
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日本でこの工房でしかできない技の迫力に息を飲む。
この「抑えた美」が、たまらない。
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内子を後に、
愛媛の代表的なやきもの「砥部焼(とべやき)」の産地へ向かう。
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唐草模様を呉須で手描きした、
厚手で丈夫な家庭用の染付磁器が砥部焼の基本。
今では唐草染付以外にも様々な磁器を生産する窯元が増えている。
山道沿いにあるうどん屋さんで腹ごしらえして...
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工房めぐり。
砥部焼の伝統技法を踏まえつつ作り手ごとのオリジナリティを出そうとする、
そんな意気を感じる窯元にいくつもめぐり合うことができた。
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古染付柄に現代風でスタイリッシュなデザインを施すもの、
砥部ではあまり使われない金彩を施して藍色と絶妙なバランスを醸すもの等々…。
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共通するのは砥部の土・釉薬を使った磁器であること、
絵付けは手描きであること。
同じベースから発して様々な派生の仕方をしていることが要因のひとつだろうか、
他のやきもの産地とは一風違った雰囲気を感じる。
どの作品を見ても、
必ずどこかに砥部焼らしさを残しているのだ。
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長旅もいよいよフィニッシュ。
ぎりぎりまで工房巡りをしていたせいで、
いつもどおり飛行機の時間までに余裕はあまりない。
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…にも関わらず、
名物 鯛めしを掻き込むようにいただく。
宇和島の鯛の味の深さとだし汁の味が混然一体となっておそろしく美味であったが、
あまりにも急いでいたために写真を撮る間さえなく…。
次回はゆっくり味わいたい…。
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九州~四国の旅日記、楽しんで頂けたろうか。
真剣に素材と向き合い、研鑽を重ね、
世に問い続ける皆さんとの熱い出会いが当店の大きな財産である。
私たちも一層自分たちを磨かねばと、
気持ちも新たにこれからもがんばろう。